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Quantitative Imaging Biomarker

Perfusion MRI

I. エグゼクティブサマリー

RSNA QIBAダイナミック造影MRI(Dynamic-Contrast-Enhanced Magnetic Resonance Imaging:DCE-MRI)技術委員会は、撮像装置の製造業者、画像解析施設、バイオ医薬品業界、アカデミア、政府研究機関、専門学会などを代表する科学者で構成されている。QIBAの活動はすべて非競争的な活動であるとみなされる。DCE-MRI委員会の目標は、撮像プラットフォーム間[1.5テスラ(1.5 T)の装置]、臨床施設間及び時間で一貫した、信頼性のある、目的に適した定量的移行係数(Ktrans[1]及び血流量で標準化したガドリニウム濃度曲線下初期面積(IAUGCBN[2]の結果を確保できる、DCE-MRIの測定及び品質管理に関する基本的な基準を定義することである。

本検討を行うきっかけとなったのは、DCE-MRIが、がんに対する予測的、予後的、あるいは薬力学的反応のバイオマーカーを提供できる可能性がある方法であることが明らかになったことである[3-11]。驚くべきことに、DCE-MRIデータの取得及び解析に用いた方法にかなりのばらつきがあったにもかかわらず、この可能性を示した結果が得られている。このことは、これらの観察の基礎に、大きな生理学的差異(すなわち良性の腫瘍と悪性腫瘍、又は非反応性の腫瘍と反応性腫瘍)があることを示唆している。すなわち、将来、臨床研究と日常の臨床診療の両方でDCE-MRIを使用できる大きな可能性があると考えられる。ただし、これを実現するためには、共通の定量的エンドポイントを使用することと、撮像プラットフォーム、臨床施設及び時間に、解析結果が依存しないことが不可欠である。

抗血管新生療法及び抗血管療法の開発にDCE-MRIを応用するためには、定量的エンドポイントであるKtrans及びIAUGCBNを採用しなければならないというコンセンサス[12]が存在する。そのため、DCE-MRI委員会は、まずこれらのバイオマーカーに着目する。DCE-MRIの標準化方法に関しては一般的な推奨があるものの[12, 13]、撮像プラットフォーム間、臨床施設間及び期間で一貫した、信頼性のある、目的に適した定量的DCE-MRI結果を確保するための十分なガイドラインはない。したがって、本プロファイルでは、こうした指針を提供するため、施設及びスキャナの適格性、被験者の準備、造影剤の投与、撮像手技、画像の後処理、画像解析、画像解釈、データ保存及び品質管理に関する基本的な基準を定義する。

臨床試験における使用の要約

本法は、ダイナミックMRIデータセットの動力学的モデリングに基づいて、ヒトのがんに関連する微小血管パラメータを頑健かつ再現的に測定する方法である。これらのデータの厳密性及び詳細については、本書の本文の各項で説明する。

II. 臨床状況及びクレーム

定量的エンドポイントに関してかなりの検討が行われているDCE-MRIの応用のひとつは、腫瘍への血液供給を標的とする新規の治療薬(具体的には抗血管新生薬)を開発するための薬力学的バイオマーカーを得るための使用である[4, 9, 14-26]。がんの根底にある活動性の分子経路に関する理解が深まったことにより、VEGFR、EGFR-tk、PI3K、mTOR、Aktなどの経路を標的とする新規の治療法が開発されている。従来の細胞傷害性の化学療法薬とは異なり、これらの分子標的薬の多くは細胞増殖抑制性で、腫瘍を退縮させるのではなく、腫瘍の増殖を抑える。このひとつの例が抗血管新生薬であり、腫瘍血管系を変化させ、腫瘍血流及び/又は透過性を抑制することで作用すると推定されている。この状況では、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)で適用される腫瘍縮小のような従来のエンドポイントは、治療効果を測定するための手段として、最も効果的であるとはいえない。他の機能的MR画像取得・解析法(例:BOLD、R2*灌流)においても、標的とする治療効果を予測及びモニタリングでき、薬力学的反応を記録できる重要な撮像バイオマーカー候補がいくつか得られているが、これらは本書の対象ではない。DCE-MRIは、患者に低分子量の造影剤を静脈内投与し、その動態を追跡することで腫瘍の微小血管環境を評価する、MRIに基づく方法である。

がん治療の標的としての血管新生の重要性が明らかになったことで、がん標的療法に関連する臨床研究や将来の臨床診療において、血管分布を測定することが重要となる。複数の文献報告において、血管新生を標的とした治療法による変化を予測及び検出するためのDCE-MRIの応用が報告されている[4, 9, 15, 17, 19, 20, 24, 25]。さらに、乳房及び前立腺を含む複数の器官系における悪性の増強病変を特定するための定量的DCE-MRIの応用にも関心が寄せられている。

こうした状況では、これらの薬剤の望ましい生理学的影響のエビデンスを、第1相臨床試験で、Ktrans及びIAUGCBNによって得ることができる。VEGFR標的薬などの一部の薬剤に関しては、腫瘍サイズを有意に減少させるためには、Ktrans及びIAUGCBNが大幅に低下したというエビデンスが必要であるものの、それだけでは十分ではない[16, 17]。また、血管標的薬などの薬剤に関しては、十分な血管作用のエビデンスと腫瘍サイズの減少が関連しない場合があるが[9]、それでもなお、他の抗がん剤との有効な併用療法との関連では重要である。いずれの場合も、十分な血管作用が認められない場合には、より強力な薬剤が必要であることが示され、十分な血管作用のエビデンスが認められた場合には、さらなる開発が適切であることが示される。

臨床試験での有用性及びエンドポイント

現在、DCE-MRIは、がんの臨床試験を実施する多くの施設において標準治療ではない。これらの施設はDCE-MRIに関する専門知識がない場合が多く、通常、複数の施設が関与することから、一貫した、信頼性のある、目的に適した定量的DCE-MRI結果を確保するための取り組み及び厳密性が必要である。したがって、本プロファイルで提供するガイドラインによって、治療によって誘導される相対的変化から有益な情報を得るだけでなく、これらの試験間で絶対的変化を比較することが可能となる。

クレーム:

定量的微小血管特性、具体的には移行係数(Ktrans)及び血流量で標準化したガドリニウム濃度曲線下初期面積(IAUGCBN)は、1.5 Tにおいて、低分子量の細胞外ガドリニウム造影剤を用い、被験者内変動係数を20%として、直径2cm以上の固形腫瘍に対して得られたDCE-MRIデータから測定可能である。*

プロファイルの対象患者:悪性腫瘍患者
対象となる生物学的特性:原発性又は転移性
対象となる目的:治療効果

*20%の被験者内変動係数は、査読文献からの保守的な推定に基づいている。これは一般に、有意であると判断されるためには、単一の被験者に約40%の変化が必要であることを示唆する。

研究担当者:
北海道大学病院放射線診断学 工藤 與亮