PAGE TOP

Quantitative Imaging Biomarker

Magnetic Resonance Relaxometry

— QRAPMASTER (SyMRI) で得られる定量値の標準化

 従来のMRIでは、T1強調像やT2強調像などといった各種コントラスト強調像を取得し、信号強度の組織間でのコントラストに基づいて診断を行う。そのため、信号強度の絶対値自体はあまり意味を持たない。T1・T2緩和時間とプロトン密度(PD)を測定すれば絶対値に基づいてより客観的な評価を行うことが可能となる。しかしながら、定量には各種コントラスト強調像を撮像するよりも時間がかかるため、これまであまり行われてこなかった。一回のスキャンにて6分程度でT1値・T2値・PDを全脳において測定するQRAPMASTER(Quantification of Relaxation times And Proton density by Multiecho Acquisition of a Saturation-recovery using Turbo spin-Echo Readout)シークエンスが2008年に開発され、T1値・T2値・PDの臨床使用が可能となった1, 2。測定した定量値を用いて、Synthetic MRIにより任意のコントラスト強調像を作成することができる3。定量値に基づいてさらに灰白質・白質のセグメンテーションや容積測定を行うことができるようになり4、また、ミエリン量の測定も可能となった5。SyntheticMR社(Linköping, Sweden)が開発したこれらの技術はSyMRIと総称され、GE, Siemens, Philipsの3社のMRIスキャナーにおいて提供されており、従来のMRI検査を置換する可能性がある。日本では2015年に本邦初で順天堂大学医学部附属順天堂医院に導入され、それ以来600例以上の症例にて撮像を行っている(2018年7月現在)。以前は2D撮像のみ可能であったが、2018年4月からは3D撮像が可能となっている。本プロジェクトでは、QRAPMASTERで得られるT1値・T2値・プロトン密度の標準化を目指す。

 2017年にはGE, Siemens, Philipsの3T MRIスキャナー(それぞれ1台ずつ、計3台)にてT1・T2・PDの測定をNIST/ISMRM標準ファントムとボランティア10名にて行った。参照値に対する直線性はいずれも非常に高かった。Intra-scanner CV(スキャナ内変動係数)はファントムではT1・T2・PDにおいて最大2.07%, 7.60%, 12.86%まで認められたが、ボランティアではT1・T2・PD共にいずれの部位の測定でも2%未満であった。Inter-scanner CV(スキャナ間変動係数)に関しても、ファントムではそれぞれ最大10.86%, 15.27%, 9.95%であったのが、ボランティアでは3.15%, 5.60%, 3.21%であった。また、ファントムでは、脳がとりうる値以外の部分で変動係数が高くなる傾向にあった。SyMRIは脳のT1, PDの定量には頑健性が高いといえるが、T2ではスキャナ間でのずれが若干目立った。また、脳以外の組織ではまだその適用には慎重になるべきと思われる。これらの結果は、SyntheticMR社にフィードバックし、論文報告した6。引き続きSyntheticMR社と協力していくと共に、今後は3Dでも検証を行っていく。

参考文献
  1. Warntjes JB, Leinhard OD, West J, Lundberg P. Rapid magnetic resonance quantification on the brain: Optimization for clinical usage. Magn Reson Med. 2008;60:320-329.
  2. Hagiwara A, Warntjes M, Hori M, et al. SyMRI of the Brain: Rapid Quantification of Relaxation Rates and Proton Density, With Synthetic MRI, Automatic Brain Segmentation, and Myelin Measurement. Invest Radiol. 2017;52:647-657.
  3. Blystad I, Warntjes JB, Smedby O, et al. Synthetic MRI of the brain in a clinical setting. Acta Radiol. 2012;53:1158-1163.
  4. West J, Warntjes JB, Lundberg P. Novel whole brain segmentation and volume estimation using quantitative MRI. Eur Radiol. 2012;22:998-1007.
  5. Warntjes M, Engstrom M, Tisell A, Lundberg P. Modeling the Presence of Myelin and Edema in the Brain Based on Multi-Parametric Quantitative MRI. Front Neurol. 2016;7:16.
  6. Hagiwara A, Hori M, Cohen-Adad J, et al. Linearity, Bias, Intra-Scanner Repeatability, and Inter-Scanner Reproducibility of Quantitative Multi-Dynamic Multi-Echo Sequence for Rapid Simultaneous Relaxometry at 3T: A Validation Study with a Standardized Phantom and Healthy Controls. Invest Radiol. 2018 [in press].

なお、本プロジェクトは、MRI学会にて公式プロジェクトとして、研究助成を得ている。
MRI学会プロジェクト研究 QRAPMASTER (SyMRI) で得られる定量値の多施設間での標準化に関する検討(2017年4月– 代表 青木 茂樹)

研究代表者:
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 教授 青木 茂樹
研究担当者:
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 非常勤助手 萩原 彰文
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 准教授 堀 正明
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 准教授 隅丸 加奈子
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 助教 鎌形 康司
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 助手 前川 朋子
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 助手 藤田 翔平
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 技師 佐藤 秀二
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 技師 濱崎 望
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 技師 中澤 美咲
順天堂大学医学部附属順天堂医院 放射線科 研究補助員 Andica Christina

連絡先:萩原 彰文
a-hagiwara@juntendo.ac.jp