公益社団法人 日本医学放射線学会

会員の皆様へ

安全に関する情報

2019年05月28日

日本医学放射線学会 造影剤安全性委員会

 日本で販売されているヨード造影剤およびガドリニウム造影剤の添付文書には、「授乳中の女性への造影剤投与後24時間または48時間は授乳をさけること」と記載されています。これは、動物実験(ラットへの静脈投与)において造影剤の乳汁中への移行が報告されていることを理由としています。しかしながら、米国放射線学会(ACR)や欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)の最新のガイドライン(1、2)では造影剤使用後の授乳について強い制限はしておらず、国内の添付文書の記載と一致していません。
 現在まで、造影剤の母乳への移行や消化管からの吸収については以下のデータが報告されています。

  • ヨード造影剤:投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の1%未満、乳児の消化管からの吸収は母乳中の造影剤の1%未満である(3、4、5)。
  • ガドリニウム造影剤:投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の0.04%未満、乳児の消化管からの吸収は母乳中の造影剤の1%未満である(6、7)。

 以上のような海外のガイドラインでの取り扱いならびに母乳への造影剤の移行に関する基礎データを勘案すると、造影剤使用後の授乳による児への影響は非常に小さいと考えられます。したがって、当委員会としては特段の理由のない限り、造影剤使用後の授乳制限は必要ないものと判断いたします。
 造影剤使用後の授乳についての実際の対応は、主治医が母親に対し、1)造影剤使用による検査の必要性、2)造影剤使用後の授乳及び授乳制限による影響について説明し、よく相談した上で決定することが望まれます。母親が造影剤使用後の授乳における児への何らかの潜在的な悪影響について懸念を抱いている場合には、検査後に24時間または48時間の授乳制限を行っても差支えないと思われますが、その間の児の栄養摂取の準備(人工乳を用いるのか、事前に搾乳をするのかなど)についてもあらかじめ相談しておくのがよいと考えます。

参考文献

  1. ACR Committee on Drugs and Contrast Media. ACR Manual on Contrast Media version 10.3 (2018) https://www.acr.org/-/media/ACR/Files/Clinical-Resources/C
  2. European Society of Urogenital Radiology. ESUR Guidelines on Contrast Agents version10.0 http://www.esur-cm.org/index.php/
  3. Bettmann MA. Frequently asked questions: iodinated contrast agents. RadioGraphics 2004;24(suppl 1): S3–S10.
  4. Tremblay E, Thérasse E, Thomassin-Naggara I, Trop I. Quality initiatives: guidelines for use of medical imaging during pregnancy and lactation. RadioGraphics 2012;32 (3):897–911.
  5. Webb JAW, Thomsen HS, Morcos et al. The use of iodinated and gadolinium contrast media during pregnancy and lactation. Eur Radiol 2005; 15: 1234-1240
  6. Wang PI, Chong ST, Kielar AZ, et al. Imaging of preg¬nant and lactating patients. I. Evidence-based review and recommendations. AJR Am J Roentgenol 2012;198(4): 778–784.
  7. Kubik-Huch RA, Gottstein-Aalame NM, Frenzel T, et al. Gadopentetate diglumine excretion into human breast milk during lactation. Radiology 2000;216(2):555–558.