公益社団法人 日本医学放射線学会

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安全に関する情報

2018年11月15日

「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」の改定について

日本医学放射線学会 造影剤安全性管理委員会

本学会では、2017年06月29日に「ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言」を発表しました。 欧米では、造影剤のアレルギー等の急性副作用について、従来、ステロイドを事前に投与することが推奨されてきました。しかしながら、欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)が発行した最新のガイドライン(ver. 10.0 [2018])ではステロイド剤の有効性に関するエビデンスが乏しいという理由で推奨が削除されており、米国放射線医会(ACR)の最新のガイドライン(ACR Manual on Contrast Media ver.10.3 [2018])や本学会の提言とは、乖離した状況となっています。しかしながら、ステロイド剤が造影剤の急性副作用の発症に無効であるというエビデンスが新たに蓄積されたわけでもないことから、当委員会としては総合的に判断し、現時点では以下のように推奨いたします。

 

ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言(2018年11月改訂版)

日本医学放射線学会 造影剤安全性管理委員会

ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の投与により、急性副作用を生ずることがあります。その症状は、軽度の蕁麻疹や悪心から、心肺停止に至るものまでさまざまです。その発生を確実に予知・予防する方法は存在しませんが、危険因子は知られており、1)造影剤に対する中等度もしくは重度の急性副作用の既往、2)気管支喘息、3)治療を要するアレルギー疾患、等とされています(1)。しかし、これらが存在しても直ちに造影剤の使用が禁忌となるわけではなく、リスク・ベネフィットを事例毎に勘案して投与の可否を判断する必要があります。

急性副作用発生の危険性を軽減できるかもしれない方法として、ステロイド前投薬が試みられることがあります。その有効性について明確なエビデンスはありませんが、急性副作用の少なくとも一部がアレルギーあるいは過敏症によると推定されているため、試みる価値があると考えられています。

前投薬としてのステロイド投与方法としては、従来、造影剤投与直前に静注することが一般的でしたが、現在ではステロイドの抗アレルギー作用を充分に発揮させるためには、理想的には造影剤投与の6時間以上前に投与することが望ましいとされています。しかし先般行った日本医学放射線学会造影剤安全委員会による全国アンケート調査の結果では、ヨード造影剤の場合には20.7%、ガドリニウム造影剤では18.8%で造影検査の直前にステロイドを静注する手法がとられていました(2)。

当委員会は、急性副作用発生の危険性軽減のためにステロイド前投与を行う場合には、緊急時を除き造影剤投与直前ではなく、充分前に行うのが望ましいと考えます。参考として米国放射線医会(ACR)のガイドラインに基づくプロトコールを示します(処方例は、ガイドラインを一部変更したものです) (1)。

ただしステロイド前投薬を行っても、造影剤による副作用を完全に防ぐことはできず、副作用が再び発現することがあり、これはbreakthrough reactionと呼ばれます。また前投薬として使用するステロイドによる副作用のリスクもあり、加えて前投薬使用による経済的負担にも考慮する必要があります。このためステロイド前投薬を行って造影検査を実施する場合には、事前に十分なインフォームドコンセントを得た上で、副作用発現時への対応を整えて実施することが望まれます。

 

<American College of Radiology Manual on Contrast Media ver.10.2に基づくプロトコール> (1)

下記のいずれかを実施する。

1.プレドニゾロン50mg(プレドニゾロン錠など各社製品あり)を造影剤投与の13時間前、7時間前、および1時間前に経口投与する。

2.メチルプレドニゾロン32mg(メドロール錠)を造影剤投与の12時間前と2時間前に経口投与する。

上記1,2に、抗ヒスタミン剤を追加してもよい(ジフェンヒドラミン50mg [レスタミンコーワ] を1時間前に筋注、皮下注または経口投与)。

3.経口投与ができない場合には、デキサメタゾン7.5mg(デカドロン®など)、もしくはベタメタゾン6.5mg(リンデロン注®など)などのリン酸エステル型ステロイドを静注してもよい。その場合は、急速静注は禁忌であり、1-2時間以上かけて点滴投与が望ましい。(3)

注意:ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなどのコハク酸エステル型ステロイドを静注で用いると、喘息発作を誘発することがある(特にアスピリン喘息の患者)ので勧められません。経口ステロイドにはこのような危険性は少ないとされています。(4)

以上

参考文献

  1. ACR Committee on Drugs and Contrast Media. ACR Manual on Contrast Media ver. 10.2. https://www.acr.org/Quality-Safety/Resources/Contrast-Manual
  2. Tsushima Y, Ishiguchi T, Murakami T, Hayashi H, Hayakawa K, Fukuda K, Korogi Y, Sugimoto H, Takehara Y, Narumi Y, Arai Y, Kuwatsuru R, Yoshimitsu K, Awai K, Kanematsu M, Takagi R. Safe use of iodinated and gadolinium-based contrast media in current practice in Japan: a questionnaire survey. Jpn J Radiol 2016; 34:130-139.
  3. 喘息予防・管理ガイドライン2018年. 監修:一般社団法人日本アレルギー学会喘息ガイドライン専門部会
  4. 厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル:非ステロイド性抗炎症薬による喘息発作. http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b05.pdf