公益社団法人 日本医学放射線学会

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2010年07月27日

【症例報告】ガドリニウム製剤投与後に発症したNephrogenic systemic fibrosis (NSF)の1例

群馬大学附属病院画像核医学科
 対馬 義人、 遠藤 啓吾
島門会本島総合病院泌尿器科
 岡部 和彦
群馬大学医学部応用腫瘍病理学
    佐野 孝昭
東京医科歯科大学放射線科 
 澁谷 均

 
 症 例はnephrogenic systemic fibrosis (NSF)発症時に44歳の男性。36歳で糸球体腎炎と診断され、血液透析導入となった。44歳で生体腎移植が行われたが、移植2日目より無尿となり、4 日目より血液透析を再開した。移植23日目にGadodiamide 15ccを用いたMR Angiographyが行われ、動脈吻合部狭窄と診断された。MRA実施後約1ヶ月にて左前腕の腫脹、疼痛、熱感、皮膚硬化が出現し、徐々に増悪、手指 関節の拘縮も出現した。症状は次第に四肢に広がり、両側肩関節を含む上下肢関節も拘縮となった。数ヶ月後にはほぼ症状が固定し、四肢の皮膚硬化と関節拘縮 に改善はなく、50歳の現在かろうじて歩行が可能な程度である。発症から約7年後にNSFの可能性に気づかれ、左前腕より皮膚生検を行い、NSFに合致す る病理所見を得た。以上のような経過、臨床所見、病理所見よりGadodiamide投与が契機となったNSFと考えられた。