公益社団法人 日本医学放射線学会

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安全に関する情報

2007年03月22日

【安全情報】ガドリニウム含有造影剤とNephrogenic Systemic Fibrosis (2007年3月)

平成19年(2007年)3月

 

日本医学放射線学会

日本磁気共鳴医学会

 

詳細は下記PDFファイルをダウンロードしてご覧ください。

ガドリニウム含有造影剤とNephrogenic Systemic Fibrosis

 

ガドリニウム含有造影剤と腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis;NSF)について、U.S. Food and Drug Administration (FDA)および英国当局UK Commission on Human Medicine (CHM)および欧州医薬品安全性監視作業部会(Pharmacovigilance Working Party;PhVWP)のCommittee for Medical Products for Human Use (CHMP)より、以下の安全性情報が出ております.

 

腎性全身性線維症(NSF)とは,1997年に提唱された疾患です.皮膚が線維化する異常が腎不全患者のみに発症したことから,以前は腎性線維化性皮膚症(NFD)と呼ばれておりました.稀な疾患とされておりますが,皮膚の硬化が主体の多臓器繊維化性疾患であり,死に到ることもあります.現在、発症の機序や原因は不明ですが,重症腎障害患者のMRI検査におけるガドリニウム含有造影剤使用との関係が示唆されています.

 

現在,米国FDAはガドリニウム含有造影剤に関して,医療従事者と患者に対し以下のように注意喚起しております.

  • 中等度から末期の腎疾患患者がガドリニウム含有造影剤によるMRIもしくはMRAを受けると,NSF/NFDが発症し、衰弱から死に至ることもある.

 

  • NSF/NFDの可能性が考えられる患者は主治医に連絡すること。NSF/NFDを発症している患者には,皮膚のつっぱりや硬化を認め,臓器の瘢痕化が見られる場合もある.以下のような状態も,NSF/NFDの徴候である. 

皮膚の灼熱,掻痒,腫脹,硬化,つっぱり,皮膚の赤色もしくは黒色斑.

白眼の黄色斑点.

腕,手,脚,足を動かすまたはその伸展に困難が伴う.関節の硬直.

寛骨もしくは肋骨の深部痛,筋力低下.

 

  • 中等度から末期の腎疾患患者で画像検査が必要である場合,可能な限りガドリニウム含有造影剤によるMRIやMRA以外の画像法を選択すること.ガドリニウム含有造影剤を投与しなければならない場合は,MRIもしくはMRA後の即時透析を考慮すること.

 

 

また,欧州医薬品庁MHRAは、現在分かっている根拠に基づき,添付文書の記載を次のように定めるよう推奨し,販売会社による検討が行われています.

 

1) オムニスキャン(ガドジアミド)

禁忌

ガドジアミドは,高度な腎障害患者(GFR< 30 mL/min/1.73m2)および肝移植を受けた/待機中の患者には投与をしないこと.

 

使用にあたっての特別な警告および特別な使用上の注意

高度な腎障害患者および肝移植患者.

高度な腎障害患者(GFR<30mL/min/1.73m2)および肝移植を受けた/待機中の患者において,ガドジアミドおよびいくつかのGd含有造影剤使用と関連のあるNSFが報告されている.従って,このような患者ではオムニスキャンを投与しないこと.

 

新生児および乳児における使用.

新生児および1歳までの乳児における腎機能が未熟であるため,このような患者に対しては,綿密な検討後にのみ投与すること.

 

副作用

オムニスキャンによるNSFが報告されている.

 

2) オムニスキャン以外のGd造影剤

使用にあたっての特別な警告および特別な使用上の注意

高度な腎障害患者(GFR <30mL/min/1.73m2)において,Gd含有造影剤使用と関連のあるNSFが報告されている.(製品名)投与によりNSFが発現する可能性があるため,このような患者に対しては,綿密な検討後にのみ投与すること.

 

副作用(NSFが報告されている製品)

NSFが報告されている.

 

参考リンク

1) http://www.icnfdr.org/

2) http://www.esur.org/Nephrogenic_Fibrosis.39.0.html

 


―参考―

推定GFR値と血清クレアチニン値との関係について

 

腎機能障害の指標には、糸球体濾過量(Glomerular filtration Rate: GFR)を参考とすることが正確であると言われております.

GFR (mL/min)=(尿中クレアチニン濃度(mg/dL)×1分間尿量(mL/min)×1.48)/(血清中クレアチニン濃度(mg/dL)×体表面積(m2))

正常:70~130 mL /min

日本人の平均体表面積:1.48 m2

 

◆推定GFR(eGFR: estimated GFR)の代表的換算式

推定式には、次のような式があります.

【Cockcroft-Gaultの式】

カナダの慢性腎臓病の白人男性249名の24時間クレアチニン・クリアランス(Ccr)データにより作られたもので,本来GFRではなく,Ccrを推定するために作成されたものである.

 

男性:Ccr(/min)=(140-年齢)×体重 / (72×血清クレアチニン)

女性:Ccr(mL/min)= Ccr(男性)×0.85

 

【MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)の簡易式】

MDRDの式は、1628名のアメリカ人のiothalamate腎クリアランスから求めた式である.

 

男性:eGFR(mL/min/1.73m2)=186.3×(血清クレアチニン値) -1.154 ×(年齢) -0.203

女性:eGFR(mL/min/1.73m2)=eGFR(男性)×0.762

 

【日本人MDRD(Modification of Diet in Renal Disease)の簡易式】

日本人の場合,MDRDは正常GFRでは過少に,GFRが低い場合には,過大に評価されるため,日本人腎臓学会では日本人の係数を求めて,0.881とした.この式を用いるクレアチニンはJaffe法にて測定することが必要である.酵素法で測定した場合には,血清クレアチニン値に0.2mL/dLを加える.

 

日本人男性:eGFR(mL/min/1.73m2)=186.3×(血清クレアチニン) -1.154 ×(年齢) -0.203×0.881

日本人